ポリファーマシーと現状維持バイアス。編

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ポリファーマシーとは





ポリファーマシーという言葉をご存知だろうか?

ポリファーマシーという単語を分解すると、ポリは“たくさん”、ファーマシーは“”なので、「たくさんの種類の薬を服用している」という意味だ。

明確な定義はないのだが、6種類以上服用している場合を総じて指すこともあれば、たくさんの薬を服用することで有害な事象が起こっている状態だという解釈もある。

たくさんの薬を服用して逆に体調が悪化するというのは驚く人もいるかもしない。誰だって健康になりたいと思って頑張って薬を飲んでいるのだから。



社会問題にもなっていてよく新聞でも見かけるが、今回はお国の医療費の話はおいといて、患者さんにとってのポリファーマシーの危険性を伝えたい。



原因





ポリファーマシーはなぜ起こるのだろうか?





ご高齢の方ほど、たくさん病気を抱えている傾向にある。
糖尿で内科に行き、腰痛で整形に行き、不整脈で循環器科に行き、緑内障で眼科へ行き…

病気それぞれに対して医師が薬を処方すると、おのずとたくさんの薬を飲むことになる。



ポリファーマシーになってしまうのは、患者さんが悪いわけでもお医者さんが悪いわけでもない。しかし多剤併用が危険であるということは事実であり、ポリファーマシーは解消する必要がある



問題点





ポリファーマシーの何が問題なのか?





薬には飲みあわせ(相互作用)というものがあり、同時に飲むことで元々の効果よりも強く出てしまって、副作用が現れることがある。さらに高齢の方は、薬を分解する機能(肝臓や腎臓の機能)が落ちていることが多く、若い人に比べ副作用が出やすい。

副作用が起こる可能性は、薬が増えるほど大きくなる。ふらつき、物忘れ、食欲低下など一見歳のせいだと見逃してしまいそうな症状が実は副作用だった、なんてこともよくある。



予防・対策





そもそも薬を追加する前に、薬以外の治療法(リハビリ・食事療法)を考えること。そして、服薬中に体調変化があったら、飲んでいる薬が原因かもしれないと疑う姿勢を定着させること。患者さん自身やご家族、介護に関わる方々がポリファーマシーの危険性を認識するというのが大きな第一歩だ。



薬を減らしたいけど、処方医に申し訳なくて言えない…という人も多いだろう。
そこは大丈夫。ポリファーマシー対策の一環として、医師は薬を減らすと点数(診療報酬)がもらえる仕組みになっている。処方医と相談し、必要性の低い薬から減らしていこう。

必要性の低い薬としてよく例に上がるのが胃粘膜保護剤。「胃潰瘍で苦しんだ時あの先生が出してくれた大事な薬」と思えるのならまだいいが、「一包化してもはや何の薬を飲んでいるか把握できていない」状態なのであれば減薬に踏み切ってもいいと思う。



クスリはリスク。しかし自己判断での服薬中断は大変危険なので絶対にやめて欲しい。過度な”クスリはリスク”もまたリスクだ。中止ではなく減量も立派なポリファーマシー解消だと思う。ぜひ身近な薬剤師に相談して欲しい。



処方カスケード





少しマニアックな話をする。



処方カスケードとは、Aという症状に処方したB剤でCという副作用が生じたが、それを薬の副作用と捉えず病態の悪化と考えさらにD剤を処方する、といった処方の連鎖のことだ。

たとえば、血圧の薬(アムロジピン)で浮腫が出る→むくみをとるために利尿剤(フロセミド)をのむ→尿酸値が上がり薬(アロプリノール)を処方される。これウソのようなホントの話。

最初の時点で副作用だと見抜き、血圧の薬を変更できればこんなことにはならなかったのだ。これは複数の科にかかっている時や転院した時に起こりやすい。処方カスケードに陥らないためには、お薬手帳を一冊にまとめて持ち歩く!かかりつけ薬局を決める!これに尽きる。



現状維持バイアス





少し前に化粧品広告のキャッチコピーで”現状維持バイアス”という言葉が使われ話題になった。新作コスメが出ても結局今までと同じような色味の化粧品しか買わない事を指していた。そしてその現状維持バイアスを壊して新しい自分を発見しようといった内容だった。

現状維持バイアス
大きな変化や未知なるものを避け、現状を維持したくなる心理。





その背景には損失回避性が働いていると言われている。

損失回避性
人は利益から得る満足度より同額の損失から得る苦痛の方が大きいと判断する。





ポリファーマシーも同じだろう。たくさんの薬を飲んでいても、「今まで副作用もなく大丈夫だったから」「もし減薬して失敗したら嫌だから」という思考から減薬に踏み切れない。



薬剤師という立場で患者さんの処方をみていると、『胃薬くらい飲んでも飲まんでもいいんじゃないか』とか『飲み忘れるってことは必要ないんじゃないか』と簡単に思うことも多かった。

しかし人のことは言えない。私は各ブランドの同じようなコーラル色のルージュを山ほど持っている女だ。今まで使ったことのない色のチークやルージュを使うのはすごい勇気がいる。その気持ちを汲み取った上で患者さんのポリファーマシーを解消してあげたいと思った。



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